第4章 雨月
いきなり先制パンチを食らったような、衝撃を受けた。
「すい…ません…大野、智、です…」
よくみたら女みたいに綺麗な顔してるのに。
目がギラギラ光ってて…
俺が今まで居た世界の人じゃないってことは、ひと目でわかった。
…いつもなら、避けて通ってたタイプだけど…
もう、行く場所がない
だからこの人に頼るしかないんだ
「ふん…口きけんじゃん…智ぃ…」
持っていた酒の缶にタバコを押し込むと、またフーっと俺に向かって煙を吐き出した。
今度こそ我慢できなくて、咽てしまった。
「俺、二宮和也。よろしくな?智…」
ゴホゴホしてる俺を、和也さんは薄く笑いながら見てる。
咳がおさまると、俺の持ってるボストンバッグを見た。
「…なに?家出少年なわけ?」
くっくっくと笑いながら、松本を見た。
「そうなんですよ…和也先輩、暫く匿ってやってくれませんか?こいつ親からDV受けてて」
心臓、止まるかと思った。
なんで松本…わかるんだろ。
なんにも言ってないのに…
「ふうん…いいよ?でも、ベッドは一個しかないから、そのへんのソファ自由に使って」
そう言うと、俺の顔を見ないでスタスタと部屋の奥に向かって歩きだした。
「智、ついてこいよ」
そう、声を掛けられて慌てて和也さんの後ろについていった。
部屋の一番奥にドアがあって。
ここは和也さんの寝室だから、許可なく入らないこと。
その右手はアイランドキッチンになってて、こことその奥のバスルームは自由に使っていいこと。
それだけ言うと、和也さんはバスルームに消えていった。