第4章 雨月
side O
その人は荒んだ雰囲気を醸し出してて…
少し長めの前髪は目に掛かってて、表情が読めない。
色が白いのは、この薄暗い中でもよくわかった。
部屋の中は暖かくて。
長袖のTシャツにハーフパンツって格好で…
完全にここに住んでる人、みたいな感じだった。
童顔の目を少し瞬かせると、松本の方を向いた。
「あっ…和也先輩っ…こんちゃーっす!」
細い体を壁に凭れ掛けて、気だるそうにこっちを見てる。
「アンタ、誰?」
その人は、手に持ってたタバコをすうっと吸うと、俺に向かって煙を吐き出した。
「あ、俺の友達です!大野って言います」
松本がペコペコしながら、俺のこと紹介してくれた。
同じ年くらいだと思ってたのに、先輩なんだ。
童顔に見えるけど…でもその眼光は鋭かった。
なんだかその迫力に押されて、なんにも言えなくなってた。
「大野!ここの家主の和也先輩だよ!」
「あ…」
この家の人なんだ…
この前までタヒチに居たって言ってたよな…?
全然日焼けもしてなくて、むしろ不健康に青白くて。
なんだかイメージと違って、混乱した。
「アンタ、口きけねーの?」
「え…?」
「自己紹介くらい、テメーの口でできねーのかよ…」
そう言うと、またタバコを一口吸った。