第4章 雨月
「ち…違いますっ…先に殴ってきたのは、あいつらだっ…」
澄岡さんがびっくりして五関を見た。
「この子は…五関くんですね?」
「はい…あの、仁科は今どこに?」
「3年の生徒たちは、職員室に居ます。仁科くんは怪我をしているので、保健室にいます」
「わかりました、ありがとうございます。澄岡さん」
「いえ…頑張ってください」
澄岡さんは、五関に向き合うと、そっとハンカチを差し出した。
「君も、頑張れ。応援しているぞ」
「……はいっ…」
五関はハンカチを受け取ると、ゴシゴシと顔を拭いた。
それから俺を見上げた。
「よし…職員室、行くぞ」
「はい」
静かな闘志が、五関の目の中に見えた。
「戻りましたっ!」
職員室の戸を開けると、職員室から続いている小会議室のドアが開放されていて、そこに同僚教師たちが出入りしているのが見えた。
「あっ…櫻井先生!こちらに!」
年配の先生が俺を見つけて手招きしてくれた。
「はいっ…すいません。今行きます」
五関の肩を叩いて、小会議室のドアへ向かった。
「すいません。櫻井到着しました。入ります…」
人垣をかき分けて、小会議室の中に入ると、3人の生徒が椅子に座っていた。
大貞、亀井、赤坂…やっぱり、昨年度に問題を起こした特進クラスの奴らだった。
「五関…」
赤坂が、五関に気づいた。