第4章 雨月
「仁科が…庇ったのか?お前を…?」
とても、想像ができなかった。
面倒くさいシーンになると、我先に消えるような奴が…まさか他人を庇うなんて…
「仁科、逆にあいつらに…殴られて…僕…怖くなって…逃げて…しまって…」
ちょっと待て…教頭からは、仁科が3年に喧嘩売ったって聞いてるぞ…話が違うじゃないか…!
「わかった…五関、その話をみんなの前でできるか?」
「…えっ…」
「どうも俺が知っている話とは、違っているようだ…それをちゃんとみんなにわかってもらわないといけない。仁科が悪者になってしまう」
「…仁科が…?」
「できるか?五関。ちゃんと先生も一緒に行くから…」
「…はい…」
ぎゅっとティッシュで目を押さえると、五関は頷いた。
「僕…ちゃんと言います」
「よし…じゃあ、ちょっと先生についてきてくれるか?」
五関は内履きのままだったから、職員玄関から一緒に校内に入った。
澄岡さんが職員室の前で待っていてくれた。
俺を見つけると、忍者のようにささっと近づいてきた。
「櫻井先生…こっちへ…」
「お、おお…五関、一緒に…」
入り口から見えないところまで引っ張って行かれて、澄岡さんが状況を説明してくれた。
「仁科くんが、突然3年の生徒に暴力を振るったそうです」
「そんな…」
一緒に居た五関の顔色が真っ青になった。