第4章 雨月
「助けて…くれたのに、僕…酷いこと言って…」
また目が潤んできた。
「やつ当たりだったんです…酷く殴られて…」
「…そうか…」
「でも…櫻井先生が…」
「え?俺…?」
「僕のこと、強いって…言って、くれた、から…」
しゃくり上げて、言葉が詰まってしまう。
「五関…」
「見ててくれるって…言ってくれたから…だから僕…今度はあいつらに仕返ししてやろうと…」
「え?ちょ、ちょっと待て…仕返し…?」
「今度殴られたら、殴り返してやろうと思ったんです…」
「おまえが…?」
「はい……」
真っ赤になった目から、ボロボロと涙が溢れてきた。
「さ、さっき…昼休みにあの2年を探しに行こうとしたら…あいつらに捕まって…また殴ってきて…」
「え?2年って…助けてくれた奴?」
「はい…謝ろうと思って…仁科に聞けばわかると思って…だから…だから…」
もう上手く喋れないほど、ぼたぼた涙が止めどなく溢れてくる。
「ご、五関…落ち着け…」
なにか拭くものをと思ってかばんを探した。
「あ…」
あの時、大野がくれたポケットティッシュが入ってた。
握りしめると、2枚出して五関に手渡した。
「…ありがとうございます…」
五関は受け取ると、ティッシュを目に当てた。
「仁科が…庇ってくれたんです…どうしよう…僕…」