第4章 雨月
「に、仁科っ…仁科がっ…」
「え…?ちょっと…?仁科…って、五関!仁科となにがあったんだ!?揉めた3年っておまえのことか!?」
思わず大きな声が出てしまって。
五関はびくっと目を見開いて固まってしまった。
「あ…ああ…すまん、大きな声だして…」
「い、いえ…」
でもびっくりしたからか、五関の涙は止まったようだった。
「落ち着いてくれ、な?ゆっくりでいいから…仁科がどうしたんだ?」
「あ…その…僕…」
ぐずっと鼻をすすると、顔を上げた。
「櫻井先生…僕、まだ…特進の奴らに…」
「…え?特進…って…」
もしかして、解決したわけじゃ…なかったのか…
「…まだ…廊下ですれ違うと、殴られたり…蹴られたり…してたんです…」
「五関…」
「でも…会わなきゃ、なんにもなかったんです…今のクラスのみんなは、絶対にそんなことしないで僕と仲良くしてくれたんで…だから、教室、行けるようになったんですけど…」
またぐずっと鼻を啜り上げた。
「この前…2年生が、階段のところで殴られてた時、止めてくれて…」
「え…?誰だ…?」
「わかんないです…2年のネクタイしていました…後から仁科が来て…」
…もしかして、大野か…?