第4章 雨月
「あっ…やべ…」
裏門まであと10メートルというところで気づいた。
大野の父親に、学校で急用が入り大野の捜索に行けないということをメールしておいた。
すぐに返事は来なかったが、あとで大野の父親ともう一度打ち合わせしないといけない…
父親によると、大野には金もカードも持たせてあるということだから、すぐにどうこうなる心配はない…と思いたい…
ちゃんと荷物を持って出ていたから、衝動的になにかするということもない…と思いたい…
…そう俺が思いたいだけなんだ…
「あああああっ…なんて日なんだっ!」
頭を掻きむしろうとして、やめた。
傷に響く…
裏門の通用口の鍵は、各職員持っているからそこから入る。
職員玄関まで急ぎながら中庭をダッシュしていると、校内はまだ昼休みでざわざわと人がいる気配がどこかしこからしている。
少しホッとして、急いで中庭を駆け抜けようとしたその時。
「うわああっ…」
植栽の見えない隙間から、誰か飛び出してきた。
全く予想外のところから人が飛び出してきたから、思いっきり後ろに尻餅をついてしまった。
「いってぇぇぇ…」
「…さ、櫻井先生ぇ…」
「あ?」
見上げたら、泣き顔の五関がそこに立っていた。
「ど…どうした?五関…?」
「せっ…先生…ご、ごめんなさいっ…ごめんなさいっ…」
五関はそのまま泣き出した。
「ちょ…ちょっと、落ち着け…どうしたんだ…?一体なにがあったんだ…?」
立ち上がって、周りを見渡してみたけど、誰も居なかった。
こんなところで一人で何してたんだ…?