第4章 雨月
学校に戻る途中、スマホには鬼のような着信があって。
地下鉄に乗っていたから出れなかったが、全部教頭からだった。
メッセージを聞きながら、駅から学校までダッシュした。
「い…痛い…」
額の傷が、ツキンツキンと痛む。
やっぱ抜糸早かったんじゃないかなあ…
大丈夫なのかよ…
留守電のメッセージの教頭の話を総合すると、どうやら仁科が3年の生徒に喧嘩を売ったらしい。
なんであんなチビが3年に喧嘩売るんだ…?
仁科はうちのクラスのもうひとりの問題児で…
欠席や遅刻だけで後は大人しい大野よりも、教師たちのマークは厳しい。
しかしまた、仁科の家も大口の寄付家庭で。
仁科のことを煙たがっている教師も多い。
なによりも厄介なのが、中等部の頃から性的マイノリティーを公言していることだ。
非常にセンシティブな問題で、彼に差別や批判が向かないよう他の生徒たちに注意を払わねばならなかった。
だが、本人はあっけらかんとしたもので。
去年いきなり金髪にしてきた時は、さすがに生徒指導部の教師たちが一丸となって叱りつけたが、どこ吹く風で…
3月まで、確か金髪だったはずだ。
新年度、登校してきたら黒に戻っていたが。