第4章 雨月
昼休みに入ったところだったから、ちょっと長いコールの後、電話が繋がった。
軽やかな女性の声が聞こえてくる。
よそ行きボイスの澄岡さんだった。
「あ、櫻井ですけど…」
『…櫻井先生』
途端に澄岡さんの声が低くなり、更に声を潜めた。
『今、電話をしようとしておりました。どこにおられますか?大野くんは見つかりましたか?』
事情を軽く話してから学校を出たから、気を使って声を小さくしてくれてるようだ。
「いえ…大野は家を飛び出してしまって…どこに行ったかわからないんです。父親とは連絡が取れまして、今から探しに行きたいんですけど…」
『なりません。大野くんのことは親御さんにお任せしてお戻りください』
「え…?」
『ちょっと問題が発生しています。学校長会議になるかもしれません』
「え…ちょっと待って、なにがあったんです?」
『2年E組の生徒が3年生と揉めました』
「えっ!?だ、誰がっ!?」
『仁科くんです…ですから、早くお戻りください』
「わ…わかりましたっ!すいません!澄岡さんっ…」
通話を切ると、スマホをバッグにねじ込んだ。
「仁科のやつううう~~~!!こんなときに何してくれんだよ~~~!!!」
半泣きになりながら、走り出した。