第4章 雨月
side S
泣き叫ぶ大野の母親を、もう一度ソファをずらして閉じ込めておいた。
もう後は、父親がなんとかするだろう。
家政婦さんが置いていった鍵で部屋を施錠して、エントランスのポストに鍵を落とし込んでおいた。
時計を見たら、12時を回っていた。
「嘘だろ…」
たった…1時間の出来事だったんだ…
10年くらい一気に老けた感じがするくらい、疲弊していた。
いや…でも大野は、こんな中で生きていたんだ…
一体どんな思いで…
「すまん…大野…」
なんで俺は気づいてやれなかったんだ。
こんな深刻な事態になっていたなんて…
午前中は1限と2限が終われば授業がなく、中間考査の問題作成に当てるつもりだった。
でもSHRで大野の姿が確認できなくて、嫌な予感がした。
家に電話をしても誰もでない。
無機質な機械の音声が聞こえて来るだけだった。
2時限目が終わって、教頭に許可をもらい…
急な家庭訪問で教頭は訝しがっていたが、連絡が取れないということを伝えると、許可してくれた。
なにせ大口寄付家庭だから。
こんなとき、拝金主義の教頭は便利だと思った。
午後までに戻るという約束だったが、大野を探さなきゃならない。
スマホを取り出して、学校に電話をかけた。