第4章 雨月
センター街を抜けて、更に先。
松濤の静かな住宅街に出た。
大きな木に囲まれた家や、真新しいでかい家が並んでる。
センター街はあんなにザワザワして臭かったのに、本当に静かだった。
「先輩の家、親が凄くてさあ…先輩、敷地内の離れに住んでるんだよ」
「へえ…」
「そこは、先輩か先輩の友達がいつでもいるから、ほんと気兼ねしないでいいからさ」
「そっか…」
「風呂もトイレもあるし、キッチンも立派なのあるんだよ」
「へえ…凄いね」
一体、どういう人なんだか、想像もつかなかった。
俺んちとは桁違いの金持ちの家らしいなということくらいしか、わからなかった。
小さな公園を抜けたら、坂道になってて。
そこからちょっと歩いて着いたのは、大きな塀に囲まれた家。
門についてる扉は、鉄の扉で。
なんだかどっかの要塞みたいだなと思った。
「先輩はもう大学生なんだけどさ。この前のゴールデンウィークはタヒチだったんだぜぇ」
「へえ…」
「女の子もいっぱい連れて行ってさ。奢ったんだって、旅行。そしたらホイホイいっぱい着いてきたってさ」
松本はゲラゲラ笑ってるけど、なにがそんなに可笑しいのか、よくわからなかった。
そんなのカネ目当てじゃん…
うちの父さんと変わらないじゃん…