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徒花まみれの心臓 ~企画~

第1章 フー・アム・アイ




これでも我慢した方だと思わないかいと言って、彼は私の答えを待つ。ずるい人だ。有無を言わさず強行してくれたならどれだけ救われたか。隊長命令でも何でもいい、いつものように何食わぬ顔をして好きにすればいいのに。私の意志で選べというのだ、この男は。それなのに、私が答えを出せずにいる間、珍しく余裕のない顔をして急かすように何度も私の名を呼ぶこのいじらしさ。いつだって自分の思い通りにやってきた男が、私の口から自分の求める答えを欲しがって、待っている。ああもう、認めるしかないのだ。愛おしいというこの気持ちを。藍染隊長にとって私は紛れもなく特別であると。情を覚えてしまったのは自分だけではなかった。――彼もまた、同じだったのだ。


「……私、はじめてなんですけど、それでもええんです?」


意外そうに少し見開かれた目に、くすりと笑みが零れる。幼少期から藍染隊長とずっと一緒にいたのに、そんなことをする暇があったとでも思っているのだろうか。彼に背を預けていた状態から身体を起こし、胡坐をかいている彼の足に正面から跨る。私がはじめての相手でなければ君の相手をした男を殺していたところだ、と藍染隊長が冗談には聞こえないような事を言うものだから、困った人だなぁとその髪を撫でた。意外そうな顔をしたくせに、なんて口が裂けても言えないけれど。されるがままになっていた彼は、私の髪を耳にかけながら、口を寄せる。


「―――君は本当に美しい」


すうっと目を細めた藍染隊長が、待ちきれなかったと言わんばかりに私の唇に噛みついた。背を支える手も、触れた唇も、隙間から零れる吐息も、口内を荒らす舌も、すべてが火傷してしまいそうなほど熱い。激しいそれに応えながら腕を彼の首に回すと、掻き抱くように力強く抱きしめられる。もう何も考えられなかった。ただ、私が欲しいと求める彼に、応えたいという気持ちしか浮かばなかった。











そんな愛じゃ世界は救えない
(恋か、愛か、情か。いつか破綻するこの関係に、名前をつけられるはずもなかった)



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