第2章 アイ・ワズ・アイ
市丸隊長と東仙と白哉
「聞いたぜ市丸、お前の特集が組まれるんだって?」
翌日。午前中に面倒な書類整理をキリの良いところまで終え、午後からは早速取材の約束が入っていたために九番隊隊舎に向かっていたところ、日番谷クンと鉢合わせ。挨拶もおざなりに言われた言葉がそれだった。心なしか機嫌よく見える彼に、昨日の時点で既に開き直った私は少し笑って肯定する。
「あら、もうそんな広まってるん?なんや恥ずかしいわ」
「俺は松本に聞いただけだ。まあ、あの檜佐木の浮かれようじゃ広まるのも時間の問題だと思うがな。…お前の交換条件のおかげか、松本が珍しくちゃんと仕事してる」
「ああ良かった、あの子ちゃんと仕事してんねや?君も苦労してはるね」
死にそうな顔で仕事してるぜと満足そうに笑う彼に、乱菊にはいいお灸だったかとうんうん頷く。助かったと小さく礼を言う日番谷クン。恐らくそれを言いに私を探していたのだろう。律儀だなぁと笑って、ひらひらと手を振る。そうして九番隊に着いた。檜佐木クンは何やらバタバタと忙しそうにしており、申し訳なさそうな顔をしてもう少し待って欲しいと言われる。挨拶をしてくれる九番隊の隊士達ににこにこ笑いながら隊首室へと向かい、ノックをしてひょこりと顔を覗かせた。
「東仙さん、お邪魔しとりますー」
「市丸か。聞いたよ、今回の件。引き受けてくれてありがとう」
ちょいちょいと手招きをされ、部屋の中へと入る。彼らしいというか、無駄なものひとつない綺麗に片付いた部屋だ。いつもの癖で、ちょん、と彼の手の甲に己の手の甲を当てる。そうすると彼は、ふっと笑んで私の手の甲に当て返した。まだ幼かった頃、東仙サンの目が見えないのだと知った私が、「私はここにいるよ」という合図のために始めたこのやりとり。目が見えなくとも気配と音だけで世界を感じ取る東仙サンにはあまり意味を為さない行為であることはすぐに知ったのだが、何がお気に召したのか、彼はそれを続けるように言った。幼い頃の、盲目であることに対する同情でも憐れみでもない純粋な優しさが嬉しかったのだと彼は言う。