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徒花まみれの心臓 ~企画~

第1章 フー・アム・アイ




平子隊長を思い出す。あの夜、藍染隊長は言っていた。平子隊長が藍染隊長を危険視し、警戒して遠ざけていたからこそ、平子隊長は彼の変化に気づけなかったと。だからこそ私は近づいた。藍染隊長を知らなければ何もできないと悟ったからこそ歩み寄った。それがこの結果かと自嘲する。(やっぱ、渡さんで正解やったかもなァ。)酒瓶の蓋を開け、お猪口に注ぐ。喉に流した辛口の酒は、藍染隊長の好みを知り尽くした私が選んだものだ。酒に強いわけでもないのに、酔って忘れてしまいたくて、彼のために用意したものがあったという痕跡を消してしまおうと、黙々と喉に流し込む。それが底を突きかけた頃に、ふと扉の外に今一番会いたくない人の霊圧を感じた。どうして、こんな時間に。眉を寄せたのは一瞬だった。ひとつ深呼吸をして、肩の力を抜く。相変わらず人の嫌がるタイミングで現れる人だと、笑みを貼り付けて、どうぞと声をかけた。


やあ、と言いながら部屋に入ってきた藍染隊長は、ゆるりと微笑んで私の隣へ座った。眼鏡を机に置き鬱陶しそうに髪をかきあげる彼を横目に、最後の一杯をお猪口に注ぐ。


「珍しいね、君が寝酒とは」


誘ってくれてもいいじゃないかと軽口を叩く彼に、今日の主役やから捕まらんやろうなと思ったんですと笑みを返す。お猪口を手に取り口元へと運ぼうとすると、それを藍染隊長の手が阻んだ。ちらりと横目で彼を見る。


「これは私のために用意してくれたものだろう?」


機嫌よさそうに、くつりと笑う彼。ほうら、全てお見通しだ。きっと私の葛藤だって知っているのだろう。知っていて、私がどうするのかを観察している。愉しんでいるのだ。性格の悪いお人、と零した声も聞こえているはずなのに。じぃっと、真っ直ぐに私を見るその視線の強さから逃げるように、顔を背けた。


「…そうですけど、今更私らの間柄でこういうんするのもなァ・て思いまして。藍染隊長、贈り物とかそういうん興味あらしまへんやろ?」


「おや、心外だな。私は君からの贈り物なら喜んで受け取るさ」


「ふふ、ご冗談を」


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