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徒花まみれの心臓 ~企画~

第1章 フー・アム・アイ




「………隊長んこと、裏切りたなかったんや、本当は、…っ、切り捨てるんが怖くて、いやでっ、…っだいすきな隊長んこと、失いたく、なかった……っ!」


「……っ、」


くしゃりと顔を歪め、彼女は泣く。これまで静かに泣いていた彼女が、はじめて子どものように声を上げて泣く。百年分の後悔と、言いたい事を言えなかった百年分の我慢が、痛いほど伝わってきて。残酷なことをさせてしまったねえ、と。僕と同様に輪の中には入らなかった京楽サンが呟く。浮竹サンや卯ノ花サンも、どこか暗い顔をしていた。そうして、平子サンに抱きしめられたまま泣く彼女へと、総隊長が口を開く。


「市丸愛美」


ぴり、と。総隊長が口を開いたことにより場に走る緊張感。平子サンの抱擁から身を離し、彼女が総隊長へと顔を向けた。


「ーーー…大義であった」


たった一言の、労いの言葉。彼女は、その言葉に込められた全てを理解したように微笑んだ。そして、破面の彼を小さく呼ぶ。彼を探す目はもう虚ろで、恐らく視界が霞んできているのだろう、ふらふらと彷徨う視線は焦点が合っていない。…いや、いつの間にか、破面の彼と黒崎サンがいないのだ。


「ぐりむ、じょー…?」


彼女がその名を紡いだ瞬間、彼女のすぐ側で黒膣が開く。そこから出てきたのは、今し方姿が見えなくなっていた黒崎サンと破面の彼で。


「わ、悪ィ。白哉を呼んでこようと思ってグリムジョーに開けてもらったんだけどさ、白哉の奴、行かねえって言うんだ」


なるほど。黒崎サンは、それで居なくなっていたのか。


「…白哉クン、怒ってはった、…?」


「…わかんねぇ。ただ、あんたへの伝言を預かってる。 “兄が死んだ時に迎えに行く”…ってよ」


「………やさしい、なぁ、」


彼ら二人にしかわからない絆。死に目に会いにくることはなく、死んでから会いに行くと言う朽木サンの言葉にやわらかく笑った市丸サンは、弱々しく涙を拭い、身体を起こそうとする。その動きを察知して、目を真っ赤にさせた平子サンが身体を起こしてやった。


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