第1章 フー・アム・アイ
「ウチらはな、お前なんてどうでもええねん。お前かて、ウチらに謝る前に話さなあかん奴がおるやろ。そこの辛気臭い顔したハゲはなァ、見とるこっちがイライラするくらいずっとお前のこと気にかけてうじうじ生きてきたんや!」
「ハゲてへんわボケ!」
言葉を返しながらも、ひよ里サンの不器用なパスをきちんと受け取った平子さんは、怒られなかったことに困惑した様子の市丸サンを見て、彼女を支える手に力を込める。
「……お前と再会した時に言ってやろうと思うてたこと、訊きたかったこと、考えてたんや。この百年、ずっと」
「…平子、隊長」
「そやのに、お前はちっとも答える気なんてあらへんし。笑って誤魔化そうとするとこも、自分のこと全然喋らへんとこも、何も変わってへんなァ。大きなったのは身体だけか、このクソガキ」
綴られた言葉は少しも優しくない。けれど、そう語る目はとても優しかった。市丸サンは、ぼろぼろと静かに涙を流して彼の言葉をただ聞いていた。
「ま、そこらへん俺は大人やからな。お前が俺に死んでくれて言うたことも、何にも言わずにさっさと逃げようとしたことも、許したるわ」
「……っ…たいちょう、」
「…謝らなあかんのは俺の方や。お前の隊長やったのに、藍染のことも危険な男やと気づいとったのに、市丸、…お前が抱えとるモンには気づいてやれへんかった。挙句の果てに、藍染にまんまと嵌められてもうて、まだちっこいお前に余計なモン抱えさせたよなァ、……ダメな隊長で、すまんかった……っ」
流れる涙を隠すように、平子サンが彼女を優しく抱きしめる。彼女は悲痛な顔で、弱弱しく首を横に振った。彼が彼自身を責めることは、彼女にとっては何よりも苦痛だろう。そこらへんが似たもの同士だなと、僕は少し笑う。
「…乱菊以外、どうでもええと思っとった。藍染隊長を倒すためやったら、何でもするつもりやったし、何でも、…棄てるつもり、やった。だれも信用できんし、一人で、戦うつもりやったんです、あの頃」
「…おん」
「そやのに、私にえらい構ってくれはって、普通の子どもに、するみたいに、怒って、心配して、優しくしてくれる人がおった。……はじめて、乱菊以外に…心開ける人が、おったんです」
「……っ」