第1章 フー・アム・アイ
「……ごめんな、乱菊」
「…っ……あんた、生まれ変わったらちゃんと、自分のために生きなさい!」
「うん、」
「それから、…私を見つけてくれて、ありがとう。…っいつも、守ってくれて、ありがとう。私、ちゃんと、生きるから、だから、っ、心配、しないでね…っ」
泣きじゃくりながら、彼女の大切な幼馴染が、心配させないようにと精一杯笑う。それを見てはじめて、市丸サンが涙を流した。百年分の、うつくしい、静かな涙だった。そうして、震える声で、強くなったねと彼女の涙を拭う。離したくないと言わんばかりにその手に縋りつく松本サンを、そっと彼女から引きはがしたのは日番谷サンだった。
「……こいつのことは心配いらねぇ。お前が命がけで守ったものを、これからは俺たちが命がけで守っていく。お前のことは、忘れない。―――ありがとう、市丸」
「…おおきに、日番谷クン。乱菊のこと、よろしゅうな」
日番谷サンはしっかりと頷き、松本サンをつれて少し離れる。そして、檜佐木サンに背中を押され、市丸サンの前へとやってきた吉良サンは、号泣していた。その様に彼女は泣きながらも呆れたように笑う。
「……市丸、たいちょお…っ…」
「イヅル、…ふ、泣きすぎや、」
「僕は、僕は…っ、貴女がいないと、三番隊には、隊長がいてくれないと、」
「…大丈夫。三番隊は、イヅルがおるから、大丈夫や。めいわく、かけてばっかりで、ごめんなァ…、イヅルは私の、最高の副官やった。…私ん副隊長が、イヅルで、よかった。ありがとう」
その言葉を聞いてもっと泣き出す彼を、大丈夫だと優しく繰り返しながら、市丸サンが弱々しく腕を上げて袖で彼の涙を拭う。そうして、吉良サンの後ろに立つ狛村サンと檜佐木サンに視線を向けて、口を開く。
「東仙サンのこと、救ってやれへんかった。ごめん、」
「貴公の所為ではない。東仙が自ら選んだ道だ。それに、東仙とは最期に和解ができた…それだけで充分だ」
「市丸隊長が東仙隊長のことを悼んでくれるだけで、俺も隊長も救われます」