第1章 フー・アム・アイ
「…市丸サン」
そうして、踏み出した。これ以上、後悔しないために。
「貴女はそれでいいんスか?」
「……ええんです。藍染隊長を倒す・て決めた時から、生きて戻るつもりは、」
「そうじゃない。貴女はこのまま、大切な人と折り合いをつけることもなく宙ぶらりんなまま彼らを置き去りにしていいのか、ってことっス」
押し黙る。彼女は迷っているようだった。苦悶の表情を浮かべる彼女に、彼女の幼馴染である松本サンや副官である吉良サンが追い打ちをかける。全部説明なんてしてくれなくていい、一人で消えてしまうのだけはやめてくれと嘆願する彼らは、泣いていた。それを見て、市丸サンは悲しそうな顔をする。
「めんどくせぇな。さっさと終わらせてきやがれ」
「え、」
重苦しい空気を破ったのは、グリムジョーと呼ばれた破面の彼だった。傷に触らないように市丸サンを支えていた手が、彼女を放り投げる。それを慌てて受け止めたのは平子サンだった。衝撃が響いたのだろう、市丸サンが苦しい呻き声を漏らす。もうちょい丁寧に扱えや!平子サンは破面の彼に文句を言いながらも市丸サンが苦しくないようにそっと体勢を変えていた。そうして、小さく彼に礼を言う。破面の彼は何も答えなかった。市丸サンが区切りをつけるのを待っているようだった。そんな彼のもとに黒崎サンが近寄るのを横目に、平子サンに支えられた彼女の元へと、皆が集まる。とりあえず止血を、と言った卯ノ花サンの申し出を止めたのは市丸サンだった。卯ノ花サンは悲しそうに彼女を見た後、素直に引き下がる。そうして、参ったなァ、と。彼女が笑った。
「こないなことんなると、思ってへんかった…。せやから、話すことも、思いつかん」
そう言う市丸サンの口からは、ひゅうひゅうと苦しそうな呼吸が漏れる。それを見て、最初に口を開いたのは、彼女が最も大事にしてきた幼馴染だった。
「……愛美。訊きたいことも言いたいことも山ほどあるけど、順番待ちが多いから手短に言うわね。あんた馬鹿じゃないの!?どうしていつも一人で抱え込むの、どうしていつも…私を置いていくのよ…っ」
言って、市丸サンの手を握りながら泣く松本サンに、彼女は申し訳なさそうに笑う。