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徒花まみれの心臓 ~企画~

第1章 フー・アム・アイ


救ってしまいたかった






















「皆さん不完全燃焼やろけど、許してな。ほんで、仮面の軍勢の皆さん、ごめんなさい。乱菊も、イヅルも……護廷ん皆さんも、ごめんな」


そう言って、つらそうに呼吸をする市丸サンに、全員が絶句する。この子は藍染サンを倒すためだけに彼の部下になり生きていく中で、藍染サンのことをも大切に思ってしまった。その結果が、これだ。彼女はもうすぐ、藍染サンのために死ぬ。


彼女が彼の目を掻い潜り、僕に会いに来た日。彼女は、藍染サンと共に死にたいのだと言った。崩玉を彼が取り込む可能性まで見据え、そうなった場合は己の中に封印してほしいと。最初にその話を持ち掛けられたときは、当然断った。彼女が彼の部下になったのは、彼女が元よりそうするつもりでいたとはいえ、総隊長から与えられた極秘任務だったのだ。なにも貴女が死ぬことはない、犠牲になる必要はないと。それなのに、彼女はそうではないのだと微笑む。戻るつもりは元よりないのだと、彼を一人にすることはできなくなってしまったのだと言って。そうしてその決意の強さに、こちらが折れた。これでよかったのだろうか。もう手遅れなのは分かっている。それでも、彼女のことをこの百年間心配し、そうして真実を訊き出したいと願ってきた平子の姿を思い出し目の当たりにする度に、どうしても自分の判断に後悔が生じてしまうのだ。


「市丸、お前、」


「……平子隊長」


「一から全部説明せぇや、百年前から全部や!何で…何でお前が死ななあかんねん!任務て何や、総隊長も喜助も知っててんか!?」


声を荒げる平子サンに、彼女は泣きそうな顔をして微笑んでいる。そうして僕は、帽子の鍔を下げた。知ったのはついこの間だ。けれど。彼女の裏切りの理由を、本当は裏切ってなどいなかった真実を、彼に打ち明ける選択肢もあったのは確かで。彼が真実を知っていれば、僕のような決断はしなかったのだろうか。彼ならば、彼女を救えたかもしれない。


「…グリムジョー、……お願い。誰にも見つからんとこ、連れてって」


彼女は、真実を語ることなく、消えようとしている。託された崩玉を握りしめた。どうか。せめて、彼女が死んでしまうことを阻止することはできなくても、彼女を幸せの中で死なせてやりたい。


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