第31章 もうすぐ僕は明日へ向かうから
すうっと仮面を外し、藍染隊長に刃を振り下ろす。耐え兼ねて動こうとした東仙サンを制し、瞬歩でその間へと入り込む。始解をしないまま、その左側頭部を目掛けて斬りかかる。身を逸らし避けた彼は、そのまま私と距離を取った。
「あら、外してもうたかな」
「…アホ言え、当たっとるわ」
たらり。平子隊長の額から血が垂れる。
「左目から上を切り落とすつもりやったんやけどね、」
「言うやないかクソガキ。俺にそんな口きけるようになったんか、生意気や」
「いつまでも子どもとちゃいますよ、お久しぶりです平子隊長。ほんで、来て早々悪いんやけど---死んでくだはります?」
にこり。笑って、神鎗を突き出した。間一髪でそれを避けた彼が私の後ろへと回り込み振り下ろした刃を受け止める。そのまま力で押され、藍染隊長と少し距離のある場所へと弾かれた。横目で、東仙サンと狛村隊長が戦闘を始めたのを確認する。藍染隊長は楽しそうにそれぞれの戦況を見て口元に弧を描いていた。
「藍染がおらん方が話しやすいやろ」
「はて、何をです?」
「市丸、腹割って話そうや。お前何で藍染に従うねん」
こういうところが、平子隊長の甘いところだ。敵だといって斬りかかるわけではなく、その前に敵対した理由をきちんと知ろうとしてくれる。何と答えたものか、わからない。はぐらかすように微笑を貼り付けると、答えを貰えないことを察したのか、平子隊長が溜め息を吐く。
「ほな、質問変えるわ。---あの夜、お前なんで俺に謝った」
「…………」
「あない手ェ震わせて、市丸、お前…また一人で何を背負い込んどるんや」
「…変わってへんね、平子隊長。そういうお人好しなところ」
貴方のその優しさに、どれだけ救われたか。思いながら、微笑みかける。平子隊長が何かを言おうと口を開く前に、雷吼咆を放った。それを断空で防がれる。
「…私んこと、ええ子やと思ってたら大間違いですよ」
「…俺に死ね言う奴がええ子なわけあるかボケ」
「仰る通りですわ。私がほんまにええ子やったら、あの夜…隊長んこと裏切ったりしまへん。せやけど、隊長、私なら説得出来るかもしれん・て思うてはるやろ」