第31章 もうすぐ僕は明日へ向かうから
平子隊長は何も答えない。無言は肯定だ。浦原サンの言った通りだ、彼はまだ、心のどこかでまだ私を信じてくれている。それが心苦しくて、なのに嬉しくて、泣きそうになる。敵意だけを向けられた方がどれだけ良かったか。さらりと髪の毛が風に靡く。顔にかかるそれを耳にかけながら、神鎗の切っ先を彼に向ける。
「説得なんかできへんよ。私には、藍染隊長の下でやらなあかん事がある。せやから---ごめんなさい、平子隊長」
「市丸---」
始解をしようとしたその瞬間、空に黒膣が現れ、驚いて視線を向ける。藍染隊長が少なからず驚いてい様子を見るに、彼にとっても予定外の事態であると悟った。どういうことだろう、虚圏の黒膣は此処へ来る前に藍染隊長が全て閉じた筈だ。護廷の死神が此処へ来られる筈がない。とすれば、十刃だけれども。ウルキオラは藍染隊長に虚夜宮の番を任されたから恐らく違う。彼は藍染隊長の言い付けに忠実だ。ノイトラだろうか?好戦的な彼の事だ、此方で戦いたがるのも分からなくはない。だけど、それはつまり、虚圏に残った死神が負けたことを意味していて。(白哉クン、)頭を過ぎったのは彼だった。ノイトラが隊長四人を葬ったとは到底思えない。信じたく、ない。誰が出て来る?全く予想がつかず、思わず凝視する。
全員の視線を浴びながら---現れたのは、黒崎一護クンとグリムジョーの2人。黒崎一護クンはその勢いのまま藍染隊長に攻撃し、軽々と防御される。舌打ちを零しながら距離を取り、護廷の死神達と何やら和気藹々と話し始めた。でも、そんなことよりも。
「なん、で、」
どうして、グリムジョーが此処に。表情が歪む。生きていて良かった、けれど、どうして此処へ来てしまったのだ。黒崎一護クンまで連れて…いや連れてきてあげたようにも見えるが、一体何をしに。藍染隊長と一言二言交わす彼から目が離せないでいると、私の姿を視界に捉えた彼が一瞬目を見開いて、そして目の色を変えて此方へ来る。私の目の前に現れた彼が、じっと、私を見下ろす。
「え、えーと、グリムジョー、何で此処に来てん」
「………」
「というかキミ、なに怒ってはるの?」
「……お前の所為だろうが!!」
「いだっ!」