第30章 煤けた終わりできみを待つ
思い出す。平子隊長を失って落ち込む私に嫌味ったらしく厳しい言葉をかけながらも、私の好きな菓子や花を持って来てはなんとかして慰めようとしてくれた。一緒に将棋をしたこともあった。当然私の全敗だった。風鈴の音を聴きながらくだらない事を話した。瀞霊廷での夏祭りに行った時はりんご飴を買ってくれた。最初は憎しみしか抱いていなかったのに、段々と彼を知って、理解して、憎しみ以外の感情を抱く様になった。子どもの姿からぐんぐん成長していった私に、彼が初めて口付けをした。大人の姿に成長するまで待っていたらしかった。三番隊隊長に推薦され、無事隊長になった時は、一緒に晩酌をした。藍染隊長と過ごして得たたくさんの思い出は、決して苦いものだけではないのだと知る。
「何を考えている?」
「藍染隊長とも長い付き合いやなァて思いながら、昔んこと思い出してました」
「何を今更。これからもっと長い付き合いになるよ」
「………そうやった、私が死ぬんは藍染隊長が死ぬんと一緒。死ぬ時は一緒、言いましたもんね」
「私のそばにいる限り、君を死なせはしないがね」
そばにいる限り、か。
「よう言いますわ、手放す気も更々あらしまへんやろ」
不敵な笑みを浮かべた彼は、ひどく優しい手つきで私の頭を撫でたのだった。
煤けた終わりできみを待つ
(乱菊の奪われたものが、すぐそこにある。なのに、手を伸ばせない)