第30章 煤けた終わりできみを待つ
「此処にはいずれ、平子真子も来るだろう」
「…彼等が来んはずないですやろね、」
「---君は平子真子に刃を向けられるかい?」
一瞬の動揺も見逃さないと言わんばかりに眼を見つめられる。笑みを深めて、当たり前です、と言った。平子隊長が現世で生きていると知らされた時から、そんなものはとっくに覚悟しているのだ。切り捨ててしまった事を悲しんだ。裏切った事を後悔した。けれど、もう後には引けなかった。敵として再会することになると悟った。平子隊長に刃を向けることが出来ず、藍染隊長に不信感を抱かれては本末転倒。この数百年が白紙になってしまう。それだけは、避けなければならないのだ。
「そうか、ならば良い」
「……なーんか悪いこと企んでますやろ、藍染隊長」
「おや、バレてしまったか」
小さく微笑を零し藍染隊長が肩を竦める。平子隊長の事をわざわざ確認したということは、きっと平子隊長と私を直接戦わせようと思っているのだろう。意地の悪い人だ。だけどそこには、私を試すと同時に、多分彼の私情も含まれている。
「ほんま、やきもち焼きなんやから」
くすりと笑みを零す。護廷に居た頃から、私が平子隊長を想って憂いていた事がずっと気に入らなかったようだ。私に真意を見抜かれたことが些か不満な様で、心なしかムッとした彼が私の腰を抱く手に力を込める。可愛い人だ。
よくよく考えてみれば、藍染隊長との付き合いは誰よりも長いかもしれない。乱菊とは幼少の頃に少しだけ一緒に暮らしたけれど、私が出て行ってしまったからあの幸せな日々はそう長くは続かなかった。平子隊長にはたった数年面倒を見てもらっただけで、あの夜にその日々も終わって。藍染隊長とは私が入隊してからずっと一緒にいる。いくら私が彼を憎んでいても、二百年近く一緒にいれば、それなりに思い出も情もあるもので。