第28章 そうだ、全ては君がいたからだ
グリムジョーは嘘をつけない。恐らく彼は本当に、黒崎一護クンの怪我を治して全快で戦う為だけに彼女を連れ出そうとしている。それに、黒崎一護クンの側にいる方が、彼女も安心できるのではないだろうか。万が一グリムジョーが負けた場合、黒崎一護クンは彼女を奪還するという目的を達成することになる。…案外悪いことでもない。
「…私は何も聞いてへんよ、好きにしィ。せやけど、それ私に報告する必要あるの?勝手に連れ出せばええやん」
「………」
「ご主人様に報告してくれはるなんて健気やねぇ、えらいえらい!」
「何回も言わすな!犬扱いすんじゃねェ!殺す!!」
「おーよしよし、落ち着きや」
首裏を抱え込んで頭を垂れさせながら頭を撫でてやると案の定嫌がって大暴れする。その姿に、失いたないなァ、なんて思いながら、その仮面に口付けを落とした。ぴたりと彼の動きが止まる。
「いってらっしゃい」
顔をこれでもかというほどに顰めたグリムジョーが、吐き捨てるように言った。
「…気色悪ィことすんじゃねえよ。---行ってくる」
そうだ、君がいたからだ
(獣の姿だった頃の彼を思い出す。もう彼は、覚えていないかもしれないけれど)