第28章 そうだ、全ては君がいたからだ
全員を救うという訳にはいかない。どんなに彼らを庇おうと、結局は死神と虚として敵対し合ってしまう。ノイトラのように、戦いの中で死にたいと考えている人もいる。だから、私は、せめてその死が穏やかなものであるように細工をすることしかできない---例外として、グリムジョーに施した鬼道は私の我儘なのだ。…彼は怒るだろうか。きっと、怒るだろう。
「市丸!!」
「ファッ!?」
扉を開けて入ってきたのはグリムジョー。霊圧を消すのが随分と上達している。お陰でまったく気付かなかった。バクバクと煩い心臓を落ち着かせながら、その姿を見る。
「あ?なんだ、ウルキオラもいたのか。まあいい…オラ、ちょっと来い」
「あ、ハイ」
グリムジョーが機嫌を損ねる前に、急いで後ろを追う。回廊操作は…大丈夫、だろう。後でまた見にくることをこっそり決めながら、ウルキオラに手を振る。無言で私を見つめていた彼の考える事は、やはりまだ分からない。蒼髪の彼を追うと、彼の自宮に着いた。
「何やの急に、ほんで今日は何す「俺は今から黒崎をぶっ潰しに行く」……そっか、行くんやね」
遂に彼が、動き出す。黒崎一護クンとグリムジョーの二人が戦うとなれば、どちらも無傷では済まないだろう。黒崎一護クンは甘い男だ。彼の甘さは、この間の件でもそれからのことを加味しても折り紙付きだ。彼がグリムジョーを殺すことは、無い、だろうと思う。であれば、私が彼に仕掛けた鬼道は発動しない。けれど、何が起きるか分からない。だから、どうか。
「…サクッと終わらせてき」
いつものように笑う。彼はただじっと私を見ている。そうして、ニッと、悪い顔をして嗤った。
「今からあの井上って女を連れて行く。黙認しろ」
「いやいやいやいや、ちょお待って」
黙認しろ、ではないだろう。私は井上織姫を護らねばならない。あのグリムジョーが戦うというのにその地に連れて行くというのは、どう考えても危険で。
「あ?ンだよ、藍染サマには黙ってろっつってんだよ」
「…………あの子んこと傷付けんて約束できる?手ェ出さん?」
「ハッ、黒崎の怪我を治させるだけだ。あの女になんざ興味ねェ」