第27章 オン・ザ・マイ・エゴ
その背中を一定のリズムで叩きながら、私の名を何度も呼ぶ彼に、その都度返事をする。…乱菊の魂を奪ったくせに。冷酷な人であるくせに。こういう、愛に飢えた子供のようなところが、放っておけないのだ。
「君がただ、私の側にいてくれるだけで、それだけで良いんだ」
「……私が先に死んだらどないしますの、」
「先に死なせなどしないよ。君が死ぬ時は、私が死ぬ時なのだから」
その言葉に、以前から考えていた事の答えが出る。ひとつ、覚悟が決まる。
「---それが藍染隊長の望みなら。最期まで、貴方と一緒におります」
不思議なことに、心はとても穏やかだ。終わりが決まってしまえば、その為に動けば良いだけで。随分と、呼吸し易くなる。
「それが私の、最も望むことだよ。私は君の全てが欲しい。君の最期すら、誰にも遣りたくはない」
「お待たせ、グリムジョー」
「遅ェ!」
グリムジョーの私室の扉を開けた瞬間、放たれた軽度の虚閃を手の甲で弾く。随分なお出迎えだ。
「そう言えば、さっきはよう我慢したなァ。えらいえらい」
「犬扱いすんなって言ってんだろうが殺すぞ!ったく……テメェが俺に言ったんだろ、上手く生きろって」
言って、顔を背ける彼に、笑う。犬扱いしているつもりはないのだけれど、可愛がってはいるのだ。藍染隊長も、グリムジョーも、白哉クンも---下手くそな生き方をしている彼らに、私はどうも弱いらしい。
「ほんで、組み手はせんの?」
ソファに仰々しく坐る彼の隣に腰掛ける。揶揄うように顔を覗き込んでやると、その大きな手で顔面を鷲掴みにされた。普通に痛い。
「気が変わった。寝る。膝貸せ」
「へ、」
手を離し、ごろりと転がった彼は私の膝の上に頭を乗せ、欠伸を噛み殺す。まさかこんなことになるとは思っていなくて、少し動揺する、が。気まぐれで、懐いたかと思えばこうして振り回して、まるで猫みたいだと思えば、なんてこと無い。可愛らしい彼の様に笑いながら、その蒼髪を撫でる。