第16章 終焉の汽笛
十一番隊長サンの言葉に、一瞬だけ、彼の霊圧が上がった。何十年前だっただろうか……彼から聞いたことがある。流魂街出身のルキアちゃんを朽木家に引き取ったのは亡き奥さんとの約束だと。自分は掟に二度も背いてしまったから、だからもう二度と掟を破るような真似はしないと。亡き奥さんの妹であるルキアちゃんを何よりも大切に思ってるくせにそれをちゃんと伝えようとしない彼。裏で色々と至極不器用な手回しまでしているのに、あの義兄妹は圧倒的なコミュニケーション不足ですれちがってばかりいる。
―――本当は誰よりもルキアちゃんを………助けたいと思っている筈なのに。
「試してやろうか?」
「試させて欲しいのか?」
ハッと意識を戻し、いつの間にか殺気の当て合いにまで発展している2人に小さく溜息を吐いた。その溜息は決して彼等にではなく、私自身に吐いたもの。彼が、掟と自分の気持ちとの間で板挟みになっていることを知っていながら、私は彼を更に苦しめる。常に互いが隣にいたあの日々など、最早見る影もない。
(嗚呼、何て滑稽)
鬼道で作り上げた頑丈な包帯を十一番隊長サンの胴体に巻きつけ、瞬歩で向かい側の建物の屋根に移動する。
「すんません六番隊長サン、少なくとも私は君を怒らせる気はないんや」
斬らせろだの放せだのと喚くこの彼は完全無視だ。
「……………愛美」
「…………ほんなら、六番隊長サン、妹サンによろしゅう」
咎めるような彼の視線に耐え切れなくて、十一番隊長サンを脇に抱えたまま瞬歩でその場を去った。ある程度離れた所で十一番隊長サンを解放すると、覚えてやがれと恨めしそうな目で睨まれた。ああ怖い怖い。
「……よくテメーの小せぇ身体で俺を運べたな。どんな仕組みだ?」
「…ふふ、そない言うたら君んトコの副官サンもやろ。まだ見た目は幼女やのに、君ほどの巨体を軽々と運んではるやん」
それもそうだと言った十一番隊長サンに笑みを零し、背を向ける。待てよ市丸、どこ行くんだ?そう尋ねられ、隊舎に戻ると答えれば、俺も行くと珍しい返事が返ってきた。
「三番隊に用でもあるん?」
「違ェ。どうせやちるの奴、四番隊に居るだろうからな…ついでだ」