第37章 外伝
死神が死ぬことなど、言い方は悪いが、よくある話だ。今回の戦で死神側に死人が出なかったことの方が稀である。近親者の死には慣れていた。祖父も、母も父も、そして緋真も。皆私を置いて死んでしまった。私にとって愛美の死は、その中の一つに過ぎないのだ。冷たいと言われようが、こればかりはどうしようもない。喪失感はある。彼奴は唯一私の友と呼べる者で、幼少の頃から付き合いがあった。時期を同じくして隊長になった。それからも、暇な時はよく一緒に過ごした。つまらぬ喧嘩や相談もした。特別だった。確かに、特別だったのだ。
「私は、死者に縋ることを良しとしない。彼奴は確かに私にとって特別だった。だが、彼奴も私も互いに大事なものがあった---それだけだ」
「……そっか」
「この髪紐は、彼奴の事を忘れないように私自身を戒めるものだ」
数百年、数千年が経ったとしても、彼奴のことを忘れないように。市丸愛美という、私の特別で、そして友であった死神を忘れることのないように、これを捨てるわけにはいかなかった。彼奴が平子真子に対しそう思っていたように、私もそうしようと思った。
「なんつーか、恋次が言ってた意味、分かる気ィするわ」
---お前と市丸の間には、誰にも踏み込めねえ雰囲気があるってあいつ言ってたんだ。二人で完成された世界っつーのかな。あいつの言ってる意味、よく分かったぜ。
そう言って生意気に笑う黒崎一護を一瞥し、私は執務に取り掛かったのだった。
おはようを言えない朝に口付けた
(愛美と共に過ごす時間が嫌いではなかった。きっと、互いに一番の理解者だったのだろう)