第37章 外伝
「…何の用だ」
「いや、瀞霊廷に用があってよ。済ませがてら覗いてみただけだ」
「そうか。ならば早々に立ち去れ」
「冷てェな!」
一人で騒いでいた黒崎一護が、ぴたりと止まる。どうやら私の手の中にある薄桃色の髪紐を目ざとく見つけたようだった。
「それ、市丸のだよな」
「…そうだ」
「まだ持ってたのか」
言って、窓から部屋に入ってくる黒崎一護を睨みつける。相変わらず自由で、そして行儀が悪い。
「…あんた、大丈夫なのか」
「何がだ」
「いや、だってよ…あんたと市丸、仲良かったんだろ?それに、…市丸の死ぬところ見ちゃったじゃねえか」
彼奴が死んでからずっと、似たような事をたくさん言われた。大丈夫なのか、辛くはないのか、と。見当違いの心配など無用で、いい加減うんざりだ。
「私が悲しんでいるように見えるか」
「見えねーから心配してんだよ。俺だけじゃねえ、他のみんなもだ」
「…彼奴の目的や任務はどうであれ、彼奴は己の信念に従って死んだ。悲しむ必要などない」
愛美は誇り高い死神だった。己の誇りにかけて、その生を全うした。それだけで充分なのだ。悲しむ必要はない。その死を哀れむ必要などないのだ。
「そんな風には見えねえけどな」
だってあんた、その髪紐見てる時、悲しそうな顔してたぜ。黒崎一護が言う。
「兄の勘違いだろう」