第37章 外伝
十刃との交戦に横槍を入れ、再会を果たしたあの時も、あいつは俺の糾弾をあっさり無視して去っていった。現世で刃を交えた時も死ねと言われたしなんなら怪我させられたし、俺の質問にははぐらかすばかりで答えなかった。最後の時だって、あいつは俺に謝っただけで。いつだって、俺のことは避けていた、ように思う。
「君は意外と鈍いなあ」
その言葉に悪態を返しながら、市丸が分かりにくいのが悪いのだと大人気なく責任転嫁をする。市丸は昔からちっとも変わっていなかった。にこにこと微笑んで全てを飲み込み、他人を頼らない。一人で抱え込んで、こちらが気づかなければケロリとした顔で隠し通す。真意を気づかれたくない時や本音を隠す時はその笑みを深める癖も、全部。何一つ変わっちゃいなくて、それがとても悲しかった。大切なものが増えていれば良いと思っていた。けれど、増えてしまえば、そのぶんあいつはまた抱え込む。大切なものが増えすぎてしまって、その全てを裏切らなければならないと気付いた時、あいつはどれほど辛かったことだろう。その大切なものを、何度、自らの手で葬り去らなければならなかったのだろう。あいつの心情を思うと遣る瀬無くて、口からは自然と謝罪が零れ落ちる。
「……頼りない隊長ですまんなァ…っ、お前が抱えとるモン何も気付けんで、一人にして、ごめんな」
護廷に入隊した頃から、藍染と総隊長との間で板挟みにされて。まだ、あんな小さな子どもだったのに。背負うには重すぎた筈だ。それでもあいつはやり切った。幼馴染の為だったというが、きっと、それだけではなかった筈だ。もし京楽サンが言うように俺を慕ってくれていたのであれば、切り捨ててしまった俺の為にも完遂させなければならないと思っていたのだろう。真面目すぎるが故に、全てを背負い過ぎた。下手くそな生き方しかできない奴だった。
「あの子は君に出会えて幸せだったと思うけどねえ」
「……せやろか」
「平子くん、君は確かにあの子を救っていたよ」