第37章 外伝
やっと呼吸が落ち着いた頃には、もう夕暮れ時になっていて。ずっと側にいてくれた隊長に申し訳なくなる。
「---あの子、昔から、優しい子だったんですよね、」
「そうか」
「誰にでも優しくして、懐かれて、見捨てることもできなくて、全部背追い込むんです」
「…ああ」
「私が言ったこと、覚えてます?どうせ藍染のことも、情が湧いて見捨てられなくなったんだろうーって、言ったの」
「言ってたな」
「結局、その通りだったでしょ。藍染にまで情覚えて、ホント、愛美の悪い癖。優しくする人を選べって、いつも言ってたのに」
思う存分泣くことができたからだろうか、少し落ち着いた。きっと、隊長が隣に居てくれたからだ。でなければ私は、いつまでもみっともなく此処で泣いていただろう。こうして静かに隣に居てくれる人がいることの有り難さを知る。あの子にも、そんな存在が居たはずだ。私の前では絶対に弱味を見せなかったあの子だけれど、朽木隊長の前では、きっと。それを棄ててしまったのは、あの子が、自分の甘さを良く知っていたからだ。裏切る為には、その甘さが邪魔だと判断したのだろう。あの子は優しいけれど、自分のことだけには厳しく、自分を切り捨てられる子だったから。
「…俺も、あの時言ったな。市丸を信じられないと」
「……言ってましたねぇ、」
「今は、信じられる。あいつが俺と雛森をどうして助けたのか、今ならわかる」
そう言った日番谷隊長は、此処にきて初めてその無表情を崩して、切ない表情で笑う。
---あいつ、大切なものを、増やしすぎてしまったんだな。俺と雛森まで、その中に入れてくれたんだな。
日番谷隊長はそれきりまた口を噤んだ。ただ静かに、目を閉じるだけ。その姿に、隊長での中のあの子の存在の大きさを垣間見る。あの子はやはり、たくさんの人に、愛されていたのだ。幸せ、だったのだろう。
「……ありがとう、愛美」
---あんたが奪い返してくれたもの、大切にする。あんたが大切にしていたもの、あんたのぶんまで大切にする。
もう、私、泣かないわ。
私の目はまだあの優しさを忘れられない
(あんたの、そういう優しすぎるところが、好きだったんだわ)