第37章 外伝
目はまだあの優しさを忘れられない
あの日の戦いから、数日が経った。空座町は現世へと戻し、そうして、また、あの子がいないまま、平和な日常が訪れる。
あの子の墓は、かつて私達が一緒に住んでいた花枯にある。毎日毎日、あの子の死を悼むたくさんの人が、あの場所を訪ねている。一人で行くのは勇気が出ないからと、雛森が私と隊長を連れてあの子を訪ねたのがつい先刻。墓にすがりついて涙を流す雛森を隊長と共に五番隊へ送り届け、そうして、私は今、あの子が死んだ場所へと立っていた。
「…バカね、あんた。本当に、どうして私の為に……っ…!バカ愛美…!」
あの子が消え去った後、総隊長によって語られた真実。そうして、浦原さんによって語られた、あの子の目的。きっかけは私だった。藍染に魂魄を奪われたことなんて、まったく記憶になかった。それでもあの子は、それを奪い返す為に、藍染の懐に潜り込んだのだ。
そんなもの、あんたが側にいて笑ってくれるのなら、いくらだってくれてやるのに。取り返そうとしなくて良かった、ただ、側にいてくれるだけで良かった。私の事を大切に思ってくれていたくせに、こういうところは分かってくれないんだから。浦原さんから魂魄を返された時、私がどんな気持ちだったか。あの子はきっと、ずっと、知らないのだろう。
「……やっぱり此処にいたか」
「…隊長、」
日番谷隊長が音も無く隣に立つ。みっともないところを見られたくなくて、涙を拭う。
「……自分を責めるなよ、松本。あいつは……市丸は、お前にそんな顔をさせたくて命を賭けた訳じゃねえだろ」
分かっている。そんなことは、分かっているのだ。それでも、あの子を失った哀しみが、深すぎて。前になんて、進めやしない。
「俺達はあいつに救われた。あいつの分まで生き抜かなきゃならねえ」
「……わかってます」
「あいつがお前に遺したものを、お前が受け入れてやらなきゃならねえ」
「わかってますってば!」
隊長が私を見て口を閉じる。涙が止まらないのだ。あの子の気持ちも、私がこれからどうすべきなのかも、そんなこと全部、わかっている。だからもう、どうか、何も言わないでほしい。そうして、私はまた、みっともなく泣き叫ぶ。そんな私を、隊長はただ黙って見ていた。