第34章 残光、きみの存在
「………市丸愛美」
いつの間にやら姿を眩ませていた総隊長が現れる。市丸は総隊長をただじっと見つめ、そうして、小さく頭を下げた。
「---任務、完了しました。死ぬまでのほんのちょっとの間、もう私の好きにさせてもろてもええですよね?」
「…うむ」
---任務、だと?
「そら良かった。…浦原サン、この崩玉は、貴方に預けます。私ん頼み事、…お願いできますやろか」
喜助が市丸に近寄り、崩玉を受け取る。
「勿論っス、」
「頼み事ばっかりしてすんません、よろしゅうお願いします」
そうして、やっと、あいつが俺達を見る。
「皆さん不完全燃焼やろけど、許してな。ほんで、仮面の軍勢の皆さん、ごめんなさい。乱菊も、イヅルも……護廷ん皆さんも、ごめんな」
「市丸、お前、」
「……平子隊長」
「一から全部説明せぇや、百年前から全部や!何で…何でお前が死ななあかんねん!任務て何や、総隊長も喜助も知っててんか!?」
どうしていつも、俺には何も言ってくれないのだろう。
「…グリムジョー」
俺の言葉に、あいつはただ笑うだけ。ここまできて、まだはぐらかそうとするのか。
「……お願い。誰にも見つからんとこ、連れてって」
「…馬鹿が」
舌打ちを一つ零して、十刃が空間を弾く。黒腟が現れる。
「市丸!!!」
手を伸ばす。駆ける。ここで逃してしまったら、もう二度と会えない予感がした。まだ何も聞いていない。まだ何も真実を知っていない。それなのに、どうして、大切なことは何も言わずに消えてしまうのか。そのままお前は、死んでしまうのか。
伸ばした手は何も掴むことができず。俺の目の前で、市丸は姿を消した。
「…くそぉぉおおおおっ!!!!!」
残光、きみの存在
(市丸が姿を消した後、総隊長の口によって語られる、残酷な真実。どこまでも優しい嘘、その強いられた裏切りに、俺はただ崩れ落ちた)