第34章 残光、きみの存在
何が起こったのか、理解することを拒んだ。市丸が、その身体ごと藍染を刺した。そうして、その口から血を流す。誰もが市丸の名を叫ぶ、その声は聞こえているはずなのに、あいつはこちらを見向きもせずに、藍染へと向き直る。誰も、動けなかった。ただその会話を、聞くことしかできなかった。
藍染と一緒に死ぬなんて、そんな。馬鹿だろう、お前が死ぬ必要なんてどこにも無いのに。藍染の下につく理由がわからなかった。訊ねても、いつもはぐらかすだけで、何も答えてはくれなかった。あいつはいつも一人で、誰にも言わず、黙って何かを抱え込む。そうして俺は、いつも気付けない。
「愛してます、藍染隊長」
市丸のそれを聞いて、藍染が、見たこともない穏やかな顔をする。崩玉が藍染の中から出てくる。あの藍染が。市丸と共に死ぬことを、受け入れたのだ。
市丸が喜助に目配せをする。苦々しい顔で頷いた喜助は、聞いたこともない鬼道を用いて、藍染をあいつの中に封印した。それを見た瞬間、気付けば喜助の胸倉を掴んでいた。
「喜助お前……!どういうことや!」
「………」
「お前は何を知ってんねや!答えろ喜助ェ!!」
「………平子サン、」
顔を歪めて喜助が口を開く。その瞬間、視界の端で、あいつがぐらりと倒れるのが見えた。
「市丸っ---」
俺が足を動かすよりも早く、グリムジョーと呼ばれる十刃がその身体を支える。
「グリムジョー…?」
「喋んな。良いから黙って身体預けてろ」
不器用な優しさ。それに気付いたあいつは、ありがとうと微笑んで、側に浮いていた崩玉を大事そうに血濡れた掌の中に包み込んだ。