第32章 どうしてもこうなる理由
「相手と剣を合わせると相手の考えが少しわかる。心が読めるとか言うんじゃねえけど…どういう覚悟で剣を振ってんのか、俺を認めてんのか見下してんのか、そういうのも含めて。最中は必死だから大抵は終わってから気が付くんだけどな。相手が強けりゃ強いほどその伝わる心ってのはデカいんだ」
「なんや、詩人やね」
「うるせーよ。---あんたにはそれがなかった。あの時のあんたは俺と戦ってても俺のことなんか見ちゃいなかった。何を見てたのかまでは知らねえけどな」
ゾッとする。だって、彼の言うことは何一つ間違っていない。
「…それと、」
言い淀む。まだ何かあるのだろうか。これ以上、図星を突かれたくないのだが。
「今だからわかる---…あんたの剣は、泣きながら悲鳴を上げてんだ」
その言葉に、驚いて少し目を見開いた。悲鳴。私の心の奥底で、出てこないようにしまっているものが、剣に乗って彼に伝わってしまっている。
「悲鳴ねぇ…そらあかん。もっと斬魄刀んこと大事にせえってことやろね」
わざと戯けると、そうじゃねえよと黒崎一護クンが食ってかかる。君の言いたいことはわかっている。分かっていないフリをしていることを分かってほしい。笑みを零しながら、霊圧を上げる。ゆらり、刀を抜いた。
「気味の悪い子やなァ、キミ」
「…あんたに言われたかねーよ」
藍染隊長がこの子に興味を持つのも良くわかる。ただでさえ色々と特殊な子であるのに、剣から心を理解してしまうなんて。恐ろしい子だ。この子が藍染隊長と剣を交えたら、藍染隊長の心をどのように読み取るのだろう。きっとこの子なら、彼の孤独を理解できるのだろうと思う。
「余計な世話かもしんねえけど、あんた……平子とちゃんと話してやれよ」
「!」
神鎗の似非説明をしてやろうか、と思っていたその時。不意に彼から言われた言葉に、ぴたりと手が止まる。どうしてここで平子隊長が出てくる?…嗚呼、確か私が現世へグリムジョーを迎えに行った時、私と平子隊長とのやり取りをこの子は見ていたなと思い出す。
「…話すって、何を?」
「な、何をって…知らねーよそんなこと。ただ、平子はあんたのことずっと気にかけてたみたいだぜ」