第53章 生還
「ああ、約束な」
顔を近づけると、自然に瑠璃が眼を閉じた。
遊ばれていた指先が絡まったまま強く握られる。
握った手から、
口付けから、
笑顔から
『大好き』が伝わって擽ったくも、
心が欣喜雀躍としてしまう。
「ん…フゥ、ん……」
重なるだけの口付けはすぐに、
吸い上げられるような口付けに変わった。
久しぶりの感触。
久しぶりの温度。
(政宗…)
(瑠璃…)
夢見心地で口付けを交わせば、軀 全ての力が抜けてゆく。
沢の水音に、口付けの音が浚われて消える。
はぁ…
離れた瑠璃の唇から蕩けた吐息が溢れる。
見つめる瞳は欲情を讃えて潤んでいる。
「……」
政宗は黙って瑠璃をじっと見つめて、
ハァァーー……と大きな溜息を吐いた。
※欣喜雀躍/きんきじゃくやく…喜びに小おどりする。