第53章 生還
「政宗?」
「……駄目だ…」
(コイツは肋骨が治り切ってないんだぞ)
独り胸中で葛藤する。
「お前の事となると、全くもって、
何もかも抑えが効かなくなる…」
失って荒れ自暴自棄になった事。
失って狂気に戦った事。
姿が見えれば構って、甘やかしたくなる事。
そして、欲情する事。
全て。
「駄目なん?」
潤んでいるだけではない。
(期待?)
そんな目で政宗を見上げる瑠璃。
「何だ、お前、誘ってんのか?
……お前…肋骨治ってないだろ…」
「…政宗、そんなの気にする人やった?」
時々出す京訛りは心を許している時。
「このっ、くっそっ、俺が、気遣ってやってんのに、煽りやがってっ」
久しぶりの小気味良い軽口に瑠璃が楽しそうに笑っている。
「ありがとうございます、でも…………」
『もっとして欲しいな』
瑠璃は政宗の耳に甘く小さな艶声を届けたのだった。