第53章 生還
細い月の夜。
縁側に座って其れを見ていた瑠璃の傍に、信玄が。
そして、少し離れて盃を口にする謙信が。
「やっぱり、戦場で死にたいのかな…」
戦をしている政宗を想った瑠璃はそんな事を、誰にともなく呟いていた。
「そうだな……俺は……
床で病に侵されて死を待つよりは、戦場で死にたい」
同じように月を見上げる信玄がそう言った。
「だが、なによりは、最愛の人の隣で逝きたいよ。正直な処はね」
「隣りで、ですか…」
「君は戦をしない女性だから、どう思うかは分からないけど」
自分を見上げる瑠璃の瞳を覗き込む。
フッと謙信が笑う気配がした。
謙信の吹呵を感じながら瑠璃は信玄に応える。
「私は…一緒に死にたい…。
愛する人の腕の中で眠るように息絶えれたら………
貴方がいない世界に生きても意味が無いない…」
ドキッとするほど熱く真っ直ぐな眼で見られた信玄が甘く微笑み返す。
「…そう、言ったら、政宗はどう言うでしょうか…」
「生きろというだろう」
(愛する者には生きていてもらいたいもんだよ)