第53章 生還
「佐助くん、謙信様に私は、『女を捨てた女』に見えているんですよ」
「てことは?」
「男でも女でも無い、という事です」
「その心は?」
「無関心」
「なるほど…」
「納得するなんて…ともかく、
私の願いを訊いて頂き、本当にありがとうございました」
瑠璃が深々と腰を折る。
「俺からも礼を言う。感謝している」
「やめろ。
利害が一致したので軍を出しただけだ」
「ああ、そうだったな」
政宗が笑う。
「じゃぁ、行くか」
「来い、瑠璃」
「わぁ、政宗さん、騎士(ナイト)みたいですね」
手を差し出す政宗を見て佐助が言った。
「?ないと ってなんだよ」
キョトンとする政宗が可愛いく見て瑠璃は唇を上げた。
「それじゃぁ…‼︎」
踏み出しかけた瑠璃の手を謙信が掴んで、距離を詰める。
「お前は俺のーー……。忘れるな」
顔を近づけて謙信が瑠璃に何かを告げた。
「何やってんだ!軍神っ、瑠璃に手を出すな、ってんだろう」
横から政宗が声を荒げ、2人を引き離し、
「早く乗れ」
馬へとグイグイ急かした。
瑠璃と政宗は最終的には、騒がしい別れの挨拶をして春日山城を立った。