第52章 探り合いの戦
妥協と忍耐しつつ政宗は交渉したのだった。
やり切れない思いを残して終結することになった。
瑠璃を失ってから既に、
月を跨ぎ過ぎていた。
その日、政宗は自分の軍を帰路へと送り、
自らは上杉軍と共に野営していた。
戦の奮闘に血が沸き、高揚して眠れなかった。
疲労も最高潮になると眠れない。
政宗は焚き火の近くの木に寄り掛かると、
足を投げ出して座った。
ユラユラと揺れる炎を見ている向こうに、瑠璃を見ていた。
落ちて行く瞬間の悲壮な顔ばかり思い浮かぶ。
絶対に無理だと思った。
思いたくなかったが、死んだとしか思えなかった。
死んでいたとしても、居場所が判れば迎えに行くつもりだった。
けれど、
(生きてる…待ってろ……)
「瑠璃…」
握った右小指の青龍の指輪が炎を反射して朱雀色に輝いていた。
最上義光の城まで北上していた政宗と上杉軍が春日山城に戻るまで、かなりの日数を要すこととなった。