第52章 探り合いの戦
政宗は上杉軍の前に立っていた。
「不本意ながら交戦なしで和睦となった。
上杉軍の援護感謝する」
「1人の犠牲も出さず済んだのは伊達殿の手腕です。素晴らしい」
そう賞賛、評価されても政宗に誇らしい笑顔も驕りの言葉もなかった。
最上の城を包囲していたのは伊達軍で、
上杉軍は離れて待機させていた。
それに気付かず伊達軍を包囲した最上軍を背後から上杉軍が包囲した。
背後の背後を取ったことになる。
戦、背後を取られることは負け、そして死を意味する。
最上軍が伊達軍を包囲した時点で、
決着はついていたのだった。
その事に気付かず攻めようとしていた詰めの甘さ、
裏の裏まで読めなかった最上義光の負けだったのだ。
『焦りは禁物だ』最後の政宗の言葉は、
母だけでなく、義光への戒めでもあった。
「政宗さん」
「佐助か…」