第52章 探り合いの戦
「叔父上、俺は「そちらが引かないのなら交戦する」と書状を何度も返した。
しかし、引かなかったのはそっちだろ」
「政宗っ!叔父上様になんて口の利き方をするのっ!」
「母上様、貴方は口を挟まないで頂きたい」
横から口を出した義姫に、丁寧だが強く有無を言わせない気合いで政宗が戒める。
「叔父上、此方には今、上杉が付いている。
良く考えろよ」
「政宗…お前がその気なら…帰れぬようにしてやろう」
「いずれ、そうなるのなら、今すぐでも俺はかまわねぇ」
叔父、義光と政宗が睨みあっていると…
「義光様っ!」
ゔ…ぐっ…と呻き声を溢しながら、縛られた義光側近が4人連れて来られた。
「おっ、お前達っ⁉︎」
「俺の軍がこの城を包囲した後方から包囲して攻めようとしていたそっちの軍将は皆捕らえさせてもらったぜ」
「う…いつの間に…っ」
義光は顔を歪めて悔しがる。
「さあ、大人しく隊を退けろ」
政宗が膝を滑らせ、義光に刀の切っ尖を突きつけて迫る。
「政宗っ!刀を突き付けるなど!収めなさいっ‼︎」
「母上は黙ってろって言ったろ」
政宗はもう一本の刀を抜くと、母 義姫に突きつける。
「ヒッ…!」
義姫が声を飲んだ。
「叔父上が隊を退け、こっちに干渉しないという約書をかかなければ、首を刎ね此処でこの家を滅ぼす」
慄々と地の底から響いてくる様な声音で迫る政宗に、義光は息を詰めて動けないでいた。
(去勢でも試されてるのでもない、本気だ)
政宗の気に義光は青ざめる。
政宗に駆け引きの交渉など初めからない。
全面交戦か無干渉和睦かの2択だ。