第52章 探り合いの戦
「信玄様、謙信様は戦はおおよそ片付いたとおっしゃってましたが、まだ援軍も戻って来ませんし、
どうなっているのでしょうか」
瑠璃の表情が曇る。
そんな瑠璃に真顔の信玄が言った。
「政宗には、君は死んだ、と伝えてあるとしたらどうだろう。
君を迎えに来るはずがない」
何の冗談か、本当か。
信玄のその答えに瑠璃は曇った顔を険しさに一変させた。
「政宗は亡骸だけでも、骨だけでも私を必ず迎えに来ます」
信玄を嘲るかのように唇は弧を描いているが、
眼は笑っていない。それどころか、
信玄にはその眼は牙を向いて見えた。
「わかったよ…。試す様なことを言って悪かった。
今、最上と交渉しているようだ」
(政宗…)
この度の大崎の戦で最上義光のことを詳しく聞いていた瑠璃。
親族だ血縁だは関係ないと言う政宗だが、
全部が全部そう簡単に戦闘で片付けられるものではないのはわかっているだろう。
瑠璃が心配をしていた頃
「政宗、戦で決着をつけるのは容易い事だ。
お前はワシが同盟を結んでいた大崎を打った。
ワシに刃を向けた事、どう落とし前をつける?」
「戦は易いのだろう?
俺は戦で落とし前つけてもかまわない」
政宗は叔父、最上義光と直接面会していた。