第52章 探り合いの戦
縁側に座って日差しを受けていた瑠璃。
戦場で捕われてから食事を与へられず、川に落下した後、助けられても眠っていてろくに食べ物を口にしないまま、その家を出た。
謙信の処に行く道中は発熱で、食べ物どころではなかった。
怪我、発熱で痩せ細ってたどり着いた瑠璃は餓死してもおかしくない程だった。
保護した謙信は、見張りを置き瑠璃が部屋から出れない様にし、食べ物を十分に与へた。
そのお陰か
「だいぶ良くなった様だ。すっかり顔色が良い」
そう声を掛けてきたのは信玄だった。
「信玄様」
「日に1度は君の顔を見ないと落ち着かなくてね」
信玄の言う通り、体力も回復し、肋骨の状態も随分よくなって、息をしても痛みは無くなり、
かなり動けるようになった。
「しっかり喰べてるかい?
女性は大福くらい柔らかくなくてはね」
(大福…柔らかく)
ゥフフフ
「信玄様は女性を食べはるんやね」
口元を軽く隠して、肩を揺すって柔らかに笑う瑠璃。
信玄はその顔を漢らしい流睇で見る。
「美しい笑顔だ」
(この笑顔で隠すことも欺く事もやってのけるんだな)
意図せず作り上げられた麗美な笑顔を見せる瑠璃に信玄は内心で感嘆した。