第52章 探り合いの戦
「青痣だらけで、眼を閉じてダラリと力無い瑠璃さん……。
それを運んでいる謙信様を見た時は驚きました」
「謙信?
ヤツが見つけたのか⁉︎
何故っ」
ギラっと鋭い政宗の眼が佐助を貫いた同時、
刀も佐助に向かって刺し出されていた。
ヒュッ、
佐助の左脇腹を過ぎた刀は、
佐助の背後にヒタ迫っていた敵を仕留めていた。
「政宗さん…ありがとうございます。
助かりました……
瑠璃さんも」
「…助かった…?」
「はい、謙信様が運んでいた瑠璃さんは、
気を失っていたんです。
無理を押して何日も馬に乗って来て、
春日山城に目通りを請いました。
謙信様の姿を見た瞬間、意識を失ったそうです」
並外れた精神力で辿り着いたのだ。
「この度の援軍は、瑠璃さんが自分を人質に、謙信様に要請したものです」
「瑠璃が……」
政宗は全身の力が抜けそうになる。
「大崎と最上のカタをつけてから人質を迎えに来い。それまでは来るな、厄介ごとが増える。との伝言です」
佐助が苦笑したようだった。
「あ、それから、援軍は全部が終わるまで貸してやる、だそうです」
「…ったく…烏軍はそんなに弱くねぇってのによ…。
佐助、お前はどうなんだ?」
「俺はー…出来るなら…」
(戻りたい?)
「政宗さんがどんな統率者なのか見てみたいですね」
「…お前…主人を野放しでいいのか?…」
「大丈夫、だと、思います」
口元を覆ったまま真顔で、困ったような声を出した佐助を、政宗は呆れ顔で見た。