第52章 探り合いの戦
「この短刀をよく見て…」
「……」
政宗の刀を押す力が緩くなり、
シャ…と金属が擦れた音がして、両手が降ろされた。
「佐助……ソレを何処で……」
ソレ、佐助のかざしていたのは透彫の家紋が入った瑠璃の短刀だった。
「どうしてお前がもってる?」
政宗の呆けた声。
「政宗さん。刀を収めて下さい」
「それは無理、だっ」
ガッ…ハッ…
政宗の背後に迫っていた敵兵が崩れ落ちる。
後ろ手に刺し貫いていたのだ。
「だが、一本は仕舞ってやろう」
「ありがとうございます。落ち着いて聞いて下さい」
佐助の様子に政宗は唇を引き結んだ。
良くない言葉を想像する。
(「形見です」てのは聞きたくない…のに)
心が恐怖と不安に震える。
心が震えて手足が震える。
「瑠璃を何処で…見つけた?
…川の中か?川岸か…お前が見つけた時、瑠璃は…」
「ボロボロで、死んでいる様でした…」
「……」
政宗が息を呑んで眼を瞑った。
(助からなかったのか…)