第52章 探り合いの戦
「何だお前、殺されに出てきたのか」
予告もなくいつの間にか行手に立っていた男を政宗は威嚇した。
「死ね」
低く唸って刀を唸らせる。
しかし、
相手はヒラリと木の葉が舞う様に軽々躱した。
「へぇ、俺の剣を躱せるのか…良いな」
嫌な笑みを浮かべると目の前に飄々と立つ男に向けて、太刀筋を変えて斬りこむ。
「止まって下さい!」
「はっ、馬鹿か、止まれば俺が死ぬだろ。
お前こそ、ヒラヒラと躱すの止めろっ」
「それこそ、俺が殺されてしまいますので、無理です」
「クククク、なんだお前、面白れーじゃねぇか」
冷静な男に嗤笑を送ると、再び刀を翻す。
「仕方ありませんね」
両刀を縫う様に躱しに躱して政宗の両刃の下へと男は自ら飛び込んで来た。
口元を隠し、目元しか分からない。
その出立ちは
「忍⁉︎」
政宗が振り上げた腕、交差して振り下ろす刃。
ギィィン‼︎
忍らしき出立ちの男は短い刀で受けた。
「ッッ…ま、政宗さん…」
政宗の力を短剣で受け止めた為、苦しそうに発せられた声。
「⁉︎」
(この声…)