第52章 探り合いの戦
瑠璃が駆け込んで援軍を出した日以降、全く顔を見せなかった城の主人(あるじ)が姿を見せたのは、
瑠璃が世話になり始めて14日は過ぎてからだった。
「どうだ、少しはマシになったか?
……顔色は良くなった…傷は…」
スラッと抜かれた刀の先が、真っ直ぐ胸元に向けられた、
刹那、
包帯が軀の真ん中を分けて肌蹴落ちた。
余りに突然、一瞬の事で、瑠璃は声もなかった。
「…」
謙信の目の前に、瑠璃の形の良い丸い乳房が晒されている。
が、謙信は動揺しない。
瑠璃も一瞬の動揺を隠しきった。
興味もなさそうに、感情のない人形の硝子玉みたいな謙信の瞳。
同性の裸を見ているかの様に、瑠璃の軀を一眼しただけだった。
「………打身の痣はだいぶ引いた。
斬られた傷もほぼ、塞がった様だな」
先見そう判断した謙信。
瑠璃が瞬いている間に傍に来て片膝を突くと、
「…えっ、ぁっ…ぅ……」
「肋(あばら)はもう少しのようだな」
肋骨を指の腹で押した。
「……お前は元々大人しくはないのだな」
クク…と喉の奥で小さく笑われた。
「?」
「女の軀とは思えない程、傷だらけだ。
虫も殺せそうに無い容姿の癖に」
謙信はフンと不遜に不躾な視線を瑠璃に向ける。