第52章 探り合いの戦
その日、色々と話しをし、長らく起きていた瑠璃は疲れたのか、翌日、丸一日眠っていた。
そして気が緩んだのか、
怪我の痛みは、時間を、日を追うごとに増していくようだった。
痛みが増し、春日山に来て5日目、
瑠璃はとうとう起き上がれなくなった。
「瑠璃、気分はどうだい?」
天井を見上げていた瑠璃に声をかけたのは、入って来た信玄だった。
「信玄様…」
「見舞いに来たんだ。君は強運の持ち主だね」
傍に座ると瑠璃を優慈の眼差しで見下ろす。
「こんな様(さま)でも強運ですか?」
瑠璃は自嘲して笑う。
「命があるのだから強運だろ。
しかも、賢く、勇敢だ。
好いた男の為とは言え、女の身でどうしてそこまで出来るんだ」
「…信玄様も、女は黙って後ろに控えていれば良いとお考えですか?」
再び自嘲気味な微笑みを瑠璃が唇に乗せる。
「女は身体的に男には劣ります。それはやも得ません。が、出来ることもあるのです」
信玄は瑠璃の腰を折らず聞いている。