第51章 独りの行方
「片目の龍は今、大崎最上と戦をしておるのであろう。
しかし、劣勢ではないと軒猿から報告が上がっておる。
劣勢ではないのに援軍を出す必要はあるまい」
「…劣勢ではありませんが…優勢でもないのです…決定的、な…後ろ盾が…ない…欲しいのです」
「………」
謙信の凍る碧の深淵の瞳が瑠璃を射抜く。
震えている瑠璃の弱い声。
だが、銀鼠色の瞳は強く揺れない。
「…瑠璃…貴様は、何故斬られ、どうやって此処まで来た」
それを知ったからと言って、何かが変わるわけではない。
けれど、伊達領から瑠璃がどうして此処まで来たのか、知りたかった。
「………謙信さ…「月の天女が居るって⁉︎」」
2人の清静の空間に張のある甘やかな声が割って響いた。
「信玄様!
勝手すんなよっ‼︎
邪魔んなんだろ〜」
幸村が追って入って来た。